AI開発に適したPCスペックを詳しく解説!
ローカル環境(自分のPC)でAI開発を行う際、開発規模や用途に応じて適したPCスペックは大きく異なります。
クラウドサービス(ネット上の環境)に頼らず自分のPCでAIモデルを学習・推論させるには、目的に応じた適切なハードウェア構成の見極めが重要です。
本記事では、以下の2つの領域を対象にしています。
・AIモデル開発(学習・推論の実行環境構築)
ローカルPC上で機械学習・深層学習モデルを学習・推論させるために必要な、GPU・CPU・メモリなどの環境要件を解説します。
・AI開発のPoC・検証フェーズ(小規模開発)
モデルの動作確認や試験的な学習を行う段階で求められる、用途別のPCスペックの目安を紹介します。
ローカルAI開発で重要となるGPU・CPU・メモリ・ストレージの役割を解説し、用途別・予算別の推奨PC構成を提示します。
※この記事では、用途に応じたPCスペックの目安を掲載しています
※ただし、使用するAIモデルや目的によって必要なスペックは変動するため、参考情報としてお読みください


AI開発において中心的な役割を果たすのがGPUです。
本章では、学習と推論の要件の違い、代表的なGPUモデル、VRAM容量と実現可能な開発規模の目安について解説します。
GPU並列処理の重要性
GPUは、数千個の小型プロセッサを使って複数の計算を同時に実行する「並列処理(複数計算の同時実行)」が得意な演算装置です。
一方、CPU(中央演算処理装置)は命令を順序立てて計算しており、AI学習で扱う大量の行列演算には向きません。
特にディープラーニング(深層学習)ではGPUによる高速な並列計算が重要となり、GPUなしでは数倍から数十倍の時間がかかることもあります。
学習フェーズと推論フェーズの要件差異
AI開発には大きく2つのフェーズがあります。
「学習フェーズ」はAIモデルにデータを学習させ最適なパラメータ(重み)を自動調整する段階で、膨大な計算と大容量のメモリを要します。
「推論フェーズ」は学習済みモデルを用いて予測や判定を行う段階で、比較的低スペックでも動作します。
例えば、大規模な言語モデルの学習には24GB以上のVRAMを備えた高性能GPUが求められますが、推論には8GB程度のVRAMでも十分な場合があります。
いずれにしても、GPUなしで、ローカルPC上でAIモデルの構築・動作させることは、現実的には困難であるのが実情です。
代表的なGPU
個人および中小規模のAI開発では、NVIDIA RTXシリーズ、AMD Radeon、Intel Arcが主な選択肢です。
・RTX 5070(12GB GDDR7)
小規模から中規模モデルの推論や微調整に対応できる、初めての本格的なAI開発に適したエントリーモデルです。
・RTX 5080(16GB GDDR7)
中規模から大規模な深層学習プロジェクトに対応でき、本格的な研究開発に適しています。
・RTX 5090(32GB GDDR7)
大規模言語モデルのファインチューニング(追加学習)や複数モデルの同時学習に対応します。
AMDとIntelも選択肢として有力です。
・AMD Radeon RX 9070 XT / RX 9070(16GB VRAM)
中規模から大規模な深層学習プロジェクトに対応できます。
ROCm(AMDのオープンソースGPU開発環境)対応でPyTorchなどの機械学習フレームワーク(開発基盤)をサポートしています。
・AMD Radeon RX 7900 XTX(24GB VRAM)
VRAM容量コストパフォーマンスに優れており、大規模データセット(学習用データ群)処理に対応します。
ROCm 6.0対応でPyTorchなどの機械学習フレームワークをサポートしています。
・Intel Arc B580(12GB GDDR6)
低価格帯でAI対応GPUを提供しており、AI開発入門に適しています。
VRAM容量と実現可能な開発規模
VRAM(ビデオメモリ)容量は、扱えるモデルサイズやデータセット規模を直接左右します。
8GB VRAMなら、ResNetやMobileNetなどの軽量モデル、Stable Diffusionにおける512×512程度の画像生成が可能です。
12から16GB VRAMであれば、BERTやGPT-2クラスの中規模言語モデル、数十GB程度のデータセットを扱えます。
24GB以上のVRAMは、大規模言語モデルのファインチューニングや並列学習に対応します。
学習フェーズと推論フェーズの要件を理解し、適切なGPUとVRAM容量を選定することで、効率的なAI開発環境を構築できます。
高度なモデルを扱うほど、ローカル環境では処理性能や安定性が課題になってきます。
特に、数十GBを超えるデータセットや複数GPUを要求する高度な開発ケースでは、AIを動作させるだけでなく、適切な設計や実装が不可欠です。
ローカル動作そのものが目的ではなく、AIシステムの開発に集中したいのであれば、専門企業への依頼もご検討ください。
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GPU性能を最大限に活かすために重要なCPU・メモリ・ストレージの役割と、それぞれの選定基準を解説します。
CPU選定のポイント
CPUはデータ前処理、ファイル読み込みなど、GPUを必要とするAIモデル動作以外の処理を担当することが主になります。
軽量なモデルを簡潔に動作させるのであれば、6コア以上、可能であれば8コア以上程度のスペックを見込むと良いでしょう。
Intel Core i5は学習・PoC段階、Intel Core i7は中規模開発、Intel Core i9は大規模開発に適しています。
メモリ容量の目安
メモリ(RAM)はデータセットの一時保存やプログラム実行に使用されます。
16GBが基本構成、32GBが標準的な推奨構成、64GB以上は大規模タスク向けです。
大規模なデータセット(数十GB以上)を扱う場合、メモリ不足によるスワップ(仮想メモリ利用)発生を避けるため、十分な容量を確保することが望ましいです。
ストレージ選定の基準
ストレージはデータセットやモデルの保存、高速な読み書きに影響します。
HDD(旧型記憶装置)ではデータアクセス速度が大きく劣るため、作業用ストレージはSSD(高速記憶装置)もしくはNVMe SSD(超高速記憶装置)を選択すると良いでしょう。
CPU・メモリ・ストレージの適切な選定により、GPU性能を最大限に引き出し、効率的なAI開発環境を実現できます。


AI開発の用途別(学習、中規模開発、大規模開発)における代表的なハードウェア要件の目安を示します。
学習・PoC(概念実証)段階のスペック要件
AI開発の初期段階やプロトタイピング(試作開発)であれば、それほど高いスペックを用意しなくても実施できます。
CPUは6コア以上、メモリは16から32GB、GPUは12GB VRAM程度が標準的です。
軽量モデル開発やベンチマーク(性能評価)データセットでの学習、画像生成AIの試用などが可能です。
中規模開発段階のスペック要件
実業務向けシステム開発や実践的な研究開発には、より強力な構成が望まれます。
CPUは8コア以上、メモリは32から64GB、GPUは16GB以上のVRAM程度を想定すると良いでしょう。
本格的な深層学習や高解像度画像生成、大規模データセットでの学習が可能です。
大規模開発・商用段階のスペック要件
大規模なモデルの利用や、高速なAIの動作を想定する高度な開発は、要求されるスペックも非常に高いものになります。
CPUは12コア以上、メモリは64GB以上、GPUは24から32GB VRAM程度を想定すると良いでしょう。
大規模言語モデルのファインチューニングや複数モデルを使用したシステム開発が可能になります。
開発規模に応じた適切なスペック選択により、コストを抑えながら望ましい性能を確保できます。
AI開発に適したPC環境の構築には、開発規模や用途を正しく見極めることが重要です。
高性能なGPUを導入しても、周辺ハードウェアとのバランスが取れていなければ本来の性能を発揮できません。
学習段階から大規模開発まで、それぞれの開発フェーズに応じた適切なスペック選択により、過剰投資を避けながら必要な性能を確保できます。
オンプレミス環境とクラウドサービスの特性を理解し、用途に応じた使い分けの判断も、効率的な開発環境の実現に必要です。
AI開発を本格化させる段階では、PCスペック選定だけではなく、モデル特性・データ規模・運用要件を踏まえた環境設計が成果に直結します。
また、大規模なAIシステムをweb公開する場合や、社内システムに組み込むのであれば、ローカルPCではなくクラウド環境やAI向けサーバーの構築も視野に入ってくるでしょう。
CLINKSでは、AI導入・RAG構築・業務AI化など幅広くご相談を承っています。
