SESとは?派遣・請負との違いと発注側が確認すべき点を解説
「エンジニアのリソースを確保したいが、SESという言葉の意味がよくわからない」「派遣や請負と何が違うのか、発注前に整理しておきたい」
情報システム部門や事業部門でエンジニア調達を検討する際、こうした疑問を持つ方は少なくありません。
IT人材の不足が続くなかで、SESの活用を検討する企業は増えています。
一方で、契約構造を正しく理解しないまま発注すると、意図せず法令違反のリスクを抱えることもあります。
そこで本記事では、Webシステム開発・運用契約企業600社以上の実績を持つCLINKSが、SES(システムエンジニアリングサービス)の意味と契約の仕組みを解説し、混同されやすい派遣・請負との違いを整理します。
あわせて、発注側が契約前に確認すべきポイントと、信頼できるSES会社の選び方も紹介します。
また、CLINKSでは直雇用のエンジニアのみでエンジニアリングサービスを提供し、契約・運用面での法令遵守に努めています。
エンジニア調達でお困りの際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
目次
SES(System Engineering Service)とは、エンジニアの技術力を提供するIT分野のサービスです。
SESの契約形態は一般に準委任契約です。
ただし、契約書の名称だけでなく、実際の業務運用が契約内容に沿っているかの確認が必要です。
SESでは、エンジニアはSES企業に雇用されたまま、契約先である発注企業のオフィスやプロジェクト現場に常駐して業務を行うのが一般的です。
この働き方は「客先常駐」と呼ばれます。

準委任契約であるSESには、成果物を完成させる法的な義務がありません。
報酬は、労働時間や技術力の提供そのものに対して支払われます。
※成果物の完成義務はないですが、善良な管理者の注意をもって業務を遂行する義務(善管注意義務)を負います
SESが広がる背景|深刻化するIT人材不足
SESが広く活用される背景には、IT人材不足があります。
経済産業省が2019年に公表した「IT人材需給に関する調査」では、2030年に最大で約79万人のIT人材が不足すると試算されています。
IT需要の伸びが中位のシナリオでも約45万人、低位でも約16万人が不足する見通しです。

こうした人材確保の課題に対応するため、外部のエンジニアの力を借りられるSESが、選択肢のひとつとして活用されています。
SESは、派遣や請負と混同されがちですが、指揮命令権の所在と報酬の対象という2点で明確に異なります。
| 契約形態 | 指揮命令権 | 報酬の対象 | 主な根拠法令 |
|---|---|---|---|
| SES(準委任契約) | 受注企業(SES企業)側 | 労働力の提供(成果物の完成義務なし) | 民法643条・656条 |
| 労働者派遣 | 発注企業(派遣先)側 | 労働力の提供 | 労働者派遣法 |
| 請負 | 受注企業側 | 成果物の完成 | 民法632条 |
それぞれの違いについて、詳しく見ていきましょう。
指揮命令権の所在で見る違い
SESと労働者派遣の大きな違いは、エンジニアに直接指揮命令を行うのが誰かという点です。
準委任契約で行うSESでは、業務の進め方や勤務時間などを指示・管理するのは、エンジニアを雇用するSES企業です。
発注企業はSES企業の担当者に依頼内容を伝え、エンジニアへの具体的な指示はSES企業が行います。
一方、労働者派遣では、派遣先企業が派遣スタッフに直接指揮命令を行えます。
SESでも、発注企業とエンジニアが情報共有や打ち合わせを行うことはあります。
ただし、発注企業が作業方法や残業などを直接指示すると、契約の名称にかかわらず、実態が労働者派遣に当たる「偽装請負」と判断されるおそれがあります。
厚生労働省は、両者を区分する判断基準を「37号告示」として公表しています。
契約書の内容だけでなく、実際に誰が指示・管理しているかを確認することが大切です。
出典:厚生労働省「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(37号告示)
報酬の対象で見る違い
SES契約は、エンジニアの労働時間や技術力の提供に対して報酬が発生する契約です。
成果物を完成させる義務は、原則として発生しません。
一方、請負契約は、成果物の完成に対して報酬が支払われる契約です。
納期までに成果物を完成させる義務があります。
そのため、発注したい業務が「特定の成果物を求めるもの」か「継続的な技術支援を求めるもの」かによって、適した契約形態は変わります。
設計・開発工程で成果物の完成責任を明確にしたい場合は請負、運用保守やテスト支援など継続的な技術支援を必要とする場合はSESが選ばれる傾向にあります。
SESか請負かという判断は、要件が固まりにくく成果が読みにくいAI開発を発注する場合に、いっそう難しくなります。AI開発の契約が複雑になる理由と、契約形態の選び方や進め方の考え方は、以下の記事にまとめています。
関連記事:AI開発の契約形態やスムーズに進めるための考え方を解説
SESには、発注企業にとってのメリットと、注意すべきリスクの両面があります。導入前に、双方を理解しておくことが重要です。
メリット|人材確保の柔軟性と採用・育成負担の軽減
発注企業にとって、SESには以下のようなメリットがあります。
- 必要なスキルを確保しやすい:自社での採用や育成に時間をかけず、専門スキルを持つエンジニアの支援を受けられます。
- 一時的な人員増強に対応しやすい:プロジェクトの繁忙期などに合わせて、契約期間や支援体制を調整できます。
- 採用・雇用管理の負担を軽減できる:直接雇用に伴う採用活動や社会保険の手続きなどの負担を抑えられます。ただし、総費用が正社員採用より安くなるとは限りません。
デメリット|契約・管理上のリスクと成果の不確実性
一方、SESを利用する際には、以下の点に注意が必要です。
- 直接指示による偽装請負のリスクがある:準委任契約や請負契約であっても、発注企業がエンジニアに直接指揮命令を行うと、実態が労働者派遣と判断される可能性があります。
- 契約関係が複雑になる場合がある:複数のSES企業を経由すると、エンジニアの雇用主や業務の管理責任者が分かりにくくなるため、契約関係と責任範囲の確認が必要です。
- 受け入れたエンジニアを別会社に再配置すると違法になるおそれがある:発注企業が受け入れたSESエンジニアを、さらに自社の取引先などに常駐させ、その取引先の指示で働かせると、「二重派遣」にあたる場合があります。これは職業安定法が禁止する労働者供給事業にも抵触しかねません。受け入れたエンジニアの就業場所は、契約で定めた範囲に限定してください。
- 成果物の完成が保証されるとは限らない:一般的な準委任契約では、請負契約のような仕事の完成義務を負いません。契約時に業務範囲や報告方法を定め、SES企業と進捗を共有する必要があります。
出典:厚生労働省「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」、厚生労働省「労働者供給事業業務取扱要領」
SESを発注する際は、契約前に次の5点を確認しておくと、後のトラブルを防ぎやすくなります。
| 確認ポイント | 概要 |
|---|---|
| 指揮命令権の所在 | 契約書に指揮命令権の所在が明記されているか |
| 直雇用のエンジニアか | 二重派遣・偽装請負のリスクを避けられるか |
| 多重下請け構造の有無 | 契約先が何次請けの構造になっているか |
| 費用相場・精算条件 | 職種・スキルに見合った金額か、精算幅の設定はあるか |
| フォロー体制・品質管理 | 現場任せにせず、SES企業側のフォローがあるか |
指揮命令権の所在を契約書で明確にしているか
契約書上、業務の指示・管理を誰が行うのかが明確になっているかを確認しましょう。
曖昧なまま運用を始めると、現場での指示が偽装請負に該当してしまうリスクがあります。
直雇用のエンジニアかどうか
二重派遣や偽装請負のリスクを避けるためには、SES企業が直接雇用しているエンジニアかどうかを確認することが大切です。
再委託先のエンジニアに対し、発注企業や中間企業が直接指揮命令を行っている場合、実態として違法な労働者供給や偽装請負に該当するおそれがあります。
多重下請け構造になっていないか
中間に複数の会社が入るほど、指揮命令系統や責任の所在は不明確になりやすくなります。
契約前に、実際に業務へ従事するエンジニアの雇用元を確認しておくと安心です。
費用相場と精算条件を確認する
SESの費用は、職種やスキルレベルによって幅があります。
複数のIT人材サービス事業者が公開している情報を参考にすると、月額45万円〜120万円程度が目安とされるケースが多いようです。
しかし、実際の金額は、担当領域や難易度、契約期間によって変動するため、複数社から見積もりを取って比較することをおすすめします。
あわせて、「精算幅(稼働時間の下限・上限とそれを超えた場合の精算方法)」が設定されているかどうかも、契約前に確認しておきたいポイントです。
フォロー体制・品質管理体制があるか
客先常駐という働き方の特性上、エンジニアの状況をSES企業側が把握できているかどうかは、業務品質に直結します。
定期的な面談やコミュニケーションツールを活用したフォロー体制があるかを確認しましょう。
なお、当社では、自社開発のコミュニケーションツール「ZaiTark」の活用や、部門責任者などによる定期面談を通じて、エンジニアの状況を早期に把握できるフォロー体制を整えています。
エンジニアリングサービスの詳しい内容はサービス紹介資料でご確認いただけます。
SES会社を選ぶ際は、価格だけでなく、コンプライアンス体制と実績を確認することが重要です。
以下では、信頼できるSES会社の選び方を解説します。
エンジニアの雇用関係と管理体制を確認する
まずは、参画するエンジニアの雇用主と、業務の指示・管理を行う責任者を確認しましょう。
複数の企業が関わる場合は、それぞれの契約関係や責任範囲も確認しておく必要があります。
直接雇用かどうかは判断材料のひとつですが、それだけで偽装請負を防げるわけではありません。
発注企業からの依頼を誰が受け、エンジニアへの指示をどう行うのかまで確認することが重要です。
また、機密情報を扱う業務では、情報管理のルールやセキュリティ認証の取得状況も確認しましょう。
当社では、お客様先に配置するエンジニアを、すべて自社の正社員・契約社員として直接雇用しています。
加えて、ISMS(ISO27001)、プライバシーマークを取得し、情報管理体制を整えています。
必要な技術領域に対応できるか、類似実績を確認する
技術面では、対応分野の広さだけでなく、自社が依頼したい業務に近い実績があるかを確認しましょう。
使用する言語やクラウド環境、担当工程などを伝え、どのような経験を持つエンジニアが参画できるかを聞くと、適性を判断しやすくなります。
実績や体制を確認する視点は、SESに限らず開発会社を選ぶ際にも共通します。アプリ開発会社を例に、外注時の考え方と選定基準・評価項目を5つのポイントに整理した記事がありますので、あわせてご覧ください。
関連記事:アプリ開発会社を選ぶ際の5つのポイントとは?プロジェクトを成功に導く方法を紹介
また、特定の製品に縛られず、自社の環境に合った提案ができるかも確認したいポイントです。
当社は、特定メーカーに依存せず、以下の7分野に対応しています。
- サーバー
- ネットワーク
- システム開発
- クラウド
- テクニカルサポート
- セキュリティ
- テスト支援
Webシステム開発・運用で600社以上の企業様と契約してきた実績も活かし、貴社の業務内容や技術環境に合わせた支援をご提案します。
参画後のフォロー体制と担当者の現場理解を確認する
安定した支援を受けるには、参画後のフォロー体制も重要です。
定期的な状況確認の方法や、課題が生じた際の相談窓口、対応の流れを確認しましょう。
営業担当者が業務内容や現場の課題を理解できるかも、選ぶ際の判断材料になります。
要望を伝えた際に、必要なスキルや役割まで具体的に整理してくれるかを見ておくとよいでしょう。
当社の営業担当には、お客様先での常駐経験を持つ元エンジニアも複数名在籍しています。
現場の実情を踏まえ、必要なスキルや支援内容についてご相談いただけます。
エンジニアの確保やSESの活用でお悩みの方は、CLINKSへお気軽にご相談ください。
貴社の課題やご希望を伺い、状況に合った支援体制をご提案します。
最後に、SESに関するよくある質問を紹介します。
SESと業務委託の違いは何ですか?
SES契約でも、発注企業から直接指示をしてもよいですか?
SESの契約期間はどのくらいが一般的ですか?
フリーランスエンジニアともSES契約は結べますか?
SES会社は途中で変更できますか?
SESを安心して活用するには、契約の仕組みを理解し、自社に合ったパートナーを選ぶことが大切です。
一般的なSESは準委任契約に基づき、エンジニアへの指揮命令はSES企業が行います。
発注企業が直接指示を出すなど、契約と実際の運用が異なる場合には、偽装請負と判断されるおそれがあります。
派遣・請負との違いを押さえ、業務の依頼方法や責任範囲を事前に確認しておきましょう。
CLINKSは、2002年の設立以来20年以上にわたりITサービスを提供し、直接雇用するエンジニアによるエンジニアリングサービスを展開しています。
Webシステム開発・運用では600社以上の企業様との契約実績があります。
SESの活用をご検討の方は、サービス紹介資料をご覧ください。必要なスキルや支援体制がまだ明確でない段階でも、お気軽にご相談いただけます。